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2006年08月23日

 全体のロングテールと、ロングテール内の未解析ヘッド。はてな関係のシステムについて少し。このエントリーを含むはてなブックマーク

この前触れたはてなのことについてなのですが、

fladdict.net blog: 『はてぶ衆愚』に煩悩是道場の人がプロレス仕掛けてきた
ここギコ!: 群集はロングテールの消費者たりえても提供者たりえないのではないか
fladdict.net blog: メモ 群集はロングテールの消費者たりえても提供者たりえないのではないか
ソーシャルブックマークは群集の叡智の夢を見るか

こんな感じで話が進行しているようです。
これをみて、幾つか「んあ?」と思うことがあり、またゲーム理論あたりの話は分からない人にはとことんわからないだろうなーと思い、そこの解説も少し。

ロングテールの話のズレ

まずこれが凄く気になる。
fladdictさんがおっしゃっていた最初の話は、ロングテールという砂浜の中にある宝石を拾い上げるには?というニュアンスのお話だったのが、なんかロングテール全体を引き上げるには?という話にされてしまっているようで、「群集はロングテールの提供者たりえないのではないか」という話が出てきてしまっている。
ロングテールは1つ1つが平均的価値が低いだとか、ヘッドが最大公約数的人気であるとか、そんなの当たり前の話で、そんな話で丸め込まれているので、なんだかな?という感じです。

現状としてヘッドの価値があるものがまだまだロングテールの中にあって、ところが既存のヘッドに(そして自身のテール性に)邪魔されて、ヘッドまで浮かび上がってこない。(これが最近加速の傾向にあり、はてぶ衆愚化と言われていたもの)
それをどうしたらいいか?というお話だったのですよー。
だから 『ハテナガの野望』はこの問題を解決しうる方法として、ユーザーに積極的に砂浜まで出て行って拾い残しの宝石を拾わせる動機付けに有効なものだったわけですよね。

消費者のテールと、コンテンツのテールはそもそも意味が全然違います。
消費者のテールは束にして合計値の価値を得るものであり、コンテンツのテールは宝石の転がる砂浜。
コンテンツのテールを束にしようという発想はそもそも誰も出していないし、そこに反論されても困る。
薄いだとか濃いだとか、コアだとかライトだとかいう趣向の話ではなく、そもそも万人受けするものがまだまだテールに埋もれている。というか最近埋もれだしたんじゃないかなー。

多数決

ソーシャルブックマークを選挙に例えてみる。
とはいっても1人何票も入れることができるわけだから、代表選出法の選挙ではなく、裁判官の信任投票に似ているのですが(1つのサイトをブックマークするか、しないかという2択という意味で)、とりあえずはてなブックマークは多数決の形態を取っています。
選挙でも何でもそうなのですけど、多数決の最大の問題は、多数が必ずしも正しいわけではないということです。
だからその問題をできる限り回避するために、選挙ではいきなり投票をするのではなく、政治家の討論や演説の時間を設け、それらの評価が多数決の結果に結びつくように配慮している。(しきれてないけど)
とにかく多数決というのは、便宜的な手段であり、正しいものを選ぶわけではなく、みんなを納得するためだけの最終手段でもあるわけです。
ソーシャルブックマークの場合、分かりやすく言えば常駐サイトに組織票のようなものがくっついていて、実際の評価以上に票が入る状態になっている。
逆にぽっと出のサイトがいいコンテンツを出していて、1人が「こいつはすげぇ!」と思っても他の人が見なければ1票だけで、ヘッドまで上ってこれない。
前の記事で、はてながブックマーク数のみで評価が決まっていることが問題だと言ったのはこういうことなんですよ。
投票において各個人の票の価値が一定なのは、国民を納得させる手段であり、絶対の条件じゃない。
例えば裁判官の信任投票が、「信任・この人知らない・不信任」の三段階評価(?)だったら、きっと国民に優しい裁判になり、裁判長は選挙活動に忙しくなるでしょうw

そもそもhotentryはヘッドじゃないのでは?

hotentryはヘッドじゃない。
というかもしヘッドを表示する機能であれば、いつ盛り上がったかに考慮する必要もなく過去から現在までずーっとあるうちの最もブックマーク数が多いコンテンツを表示すればいいわけです。
例えばGoogleとかは、いつリンクされたか?なんてことは考慮せずに、単純な参照の数をそのページの評価として算出しているわけだから、ヘッドと言えるかもしれない。

hotentryのホットっていうのがそもそも、時系列を考慮して新陳代謝を行い、新しいコンテンツを表示していくものであり、全然ヘッドじゃないわけですよ。(もちろんテールだというわけでもないけど)
だから本来hotentryには、自分の知らない新しい面白いサイトが表示されていて、みんなが話題にしている新発見を知ることができる機能であるわけなんだよね。
ところがGIGAZINEみたいに、常駐サイトが出てくるとそうはいかなくなってくる。
記事単位で見れば新しいページであるけど、サイト単位で見ればhotentryユーザーなら既に知っている古い情報になってしまうというわけですねー。

追記:
ホットさのヘッドという意味のヘッドではあります。
しかしGIGAZINE等のサイトそのものが持つヘッド性とは違うヘッド性になります。

ゲーム理論のお話、目指すものは?

ゲーム理論というのはテレビゲームのゲームとはちょっと違います。
人間が多人数いて、彼らが自分の好きなように動いた時どうなるか?という話を扱う学問のことです。(かなり適当な説明)

fladdict.net blog: 『はてぶ衆愚』に煩悩是道場の人がプロレス仕掛けてきた
この下の部分、取り消し線で見にくくなっていますが興味深いことが書いてありますし、こういう思考方法は同意できます。コメント欄も面白いです。
これがどういう話なのかというのをちょっと解説。

はてなブックマークに対して、最近良いエントリーが上に来ないという文句を言って、「おまえのためにブックマークしているんじゃないんだよ!」と返ってくるのであれば、まったくの見当違いの話なんです。

んーと、良いシステムというのは、全ての人間が利己的に動いた時に全体の利益が最大になる、というものです。
例えばWinnyは自分のファイルをアップロードすると人のファイルをダウンロードしやすくなります。
そこで多くの人がファイルをアップロードし、Winnyネットワークはファイルに潤い、Winny全体の利益が上ります。
また、資本主義社会では働けばお金が貰え、贅沢ができるので多くの人が働き、国が潤いますよね。
(これらは本当に単純化したお話です。実際はもっと、かなり、複雑です)
Googleで言えば、みんな「Googleのために、よいサイトにリンクしようぜー」とか考えているわけではなく、自分でよいサイトにリンクしたいからしているという、ただそれだけの利己的な行為なわけです。
ところがGoogleシステムを通せばそれは価値のあるサイトの抽出という利益にかなってくれる行為となるわけです。

はてなブックマークで言えば、個人が自分の好きなサイトを登録して自分の役に立てる、もしくはちょっと言及したいという利己的行動を起こす。
それを利用してはて、なシステムは、ユーザーに利益のあるサイトを検出して表示することができる。
そしてこの一連のシステムではてな会社は広告収入を得ることができる、といったように八方へ利益をもたらすシステムになるわけです。
これが「プラス収支で終わるナッシュ均衡」と書かれているものです。
だからそもそも、俺のためにブックマークしろ!と言っている人間がいるわけではなく、最初からブックマークは自分のためにすればいいんです。
ところがシステムに綻びが出てくると、

システムの綻びと修正

システムは例外なく綻びが出てくるのです。

例えば資本主義のシステムでは独占や寡占のように、自分たちが儲けようとして裏工作をする例があり、早い話がシステムの想定外の動作が発生して上手くいかない。
Googleで言えばSEO等の、Googleのシステムを逆用し、自分たちの利益となるように操作する人間が出てきちゃいます。

で、これらが善か悪かっていう話はどうでもいいんです。
理論上利己的な動きをする人間が出るのは当然のことだし、システムはそれを吸収しなければいけません。
独占や寡占の場合、公正取引委員会というものが存在し、彼らが独占や寡占に一定のリスクを与えることで、独占を利益のある行動ではない状態にしてしまうことで、独占をしないように調節します。
GoogleのSEO対策も同じく、マイナス要素を与え、利益を調節します。
悪いことをしてるから罰するとかそういう問題ではなく、システムの調整のために、各個人の最も利益となる行動を、全体の利益になる行動へと操作することで全体の利益を高めるわけです。

で、はてなは先ほど述べたように、ユーザーは本当に良いサイトを探すのではなくて、既に有名になったサイトにくっついてそこをなんとなくブックマークするようになってしまう。楽だから。
それは良いことでも悪いことでもなく、ほうっておけばそうなってしまう。
彼らを責める必要も、こうしろ!と命令する必要も無い。
でも、例えばこういう強力なサイトが30も50も出てきてしまえば、hotentryはそれらのサイトの更新通知機能を持つだけのRSSリーダーに成り下がってしまう。

だったら、はてなのシステムをもうちょっと改良するべきだ。
ユーザーが利己的な動きをしたとき、hotentry(もしくはそれに代わる新しい項目)が正しく新陳代謝をし、今一番ホットなページを表示するようなシステムを。
その例が 『ハテナガの野望』とか、はてな株取引なわけです。
でも、もしそれが間に合わないのであれば、ユーザー主導で調節を図ることがあるかもしれない・・・

、、、というのが今までのお話。
ここまで纏めてみましたがいかがでしょう?

あっちこっちで、「ユーザーのせいにすんな!俺らは好き勝手にブックマークしてるだけなんだよ!」と食って掛かる文章を見かけるのですが、いったい誰に向かって石を投げているのか知らないですけど、とりあえずfladdictさんはそんなこと言ってませんよ?
だってシステム面からの改良を図っているわけですし。
衆愚の原因はシステムにある。そんなのわかって議論している時に俺らはわるくないんだ!ふざけるな濡れ衣だ!なんて騒がれても、あなた誰?状態ですよ。

おまけ こういった話によく出る単語の解説

ナッシュ均衡
「全員が利己的に動いた時に行きつく状態」と考えてください。
このとき全ての人が最大の利益を得ようとしている状態になります。
はてなブックマークで言えば、好きなようにブックマークをしている状態です。
ここを全体の利益に結びつけるのがweb2.0のシステム屋の腕の見せ所です。

パレート
パレートとは「全体の利益」を意味する単語だと思ってください。
パレート効率とは全体の効率のことで、「パレート効率性を優先」というと、個人の損を無視して全体の利益を上げることを意味します。
パレート改善というのは、なるべく損をする人を出さないように、全員の利益が総合的に上昇するようにすることを意味します。

Win-Win
ホリエモンがたまに口にしてた単語です。
参加した人間全員に利益が生まれる形、というものです。
誰か1人を犠牲にしてそこから利益を吸い上げるのではなく、無から利益を作り出しそれを分配することになります。
パレート改善した結果が、全員がプラス利益になる状態であれば、これをWin-Winのシステムと呼べます。
これもまたWeb2.0が目指す最終地点です。
ちなみにWin-Loseや、Win-Drawという単語も一応存在します。

非ゼロ和
Win-Winを成り立たせるために必要なものです。
誰かが利益を得ても、その損失を別の誰かが被ることが無いという状態を言います。
例えば農業は無から利益を作り出しますから非ゼロ和になります。
Googleも誰に労力を強いることなく利益を生み出します。
これは既に存在するもので、重要なのは誰かが得をすると誰かが損をするという固定概念にとらわれないことです。
上手く使ってWin-Winを作るのが最も良い利益になるわけです。

ちなみにややこしいのですけど、買い物も非ゼロ和です。
買う側にとっては商品に価値があり、売る側にとってはお金に価値があるため、両方とも得をしているわけですね。
世の中で長く続いているシステムは大体、非ゼロ和でWin-Winです。
今ネットの世界でこのような、永く当たり前のように続くシステムを、新しく作り出そうというのだから・・・大変な話ですよね。

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コメント

778   投稿者: Taka (2006年08月24日 00:43)

どもです、打ち消し線の件を、もう僕が書き直す必要ないぐらいまとめていただいて、感激です。

ただ、「hotentryはヘッドではない」というのは、ちょっと自分にはまだわかりません。一応あれは短期的な意味ではヘッドではないかと思うのです。そして、長期的なヘッドやテールを抽出する手段は現状のはてブにはないのかなと。

あと一応ですが、僕の方も「群集はロングテールの消費者たりえても提供者たりえないのではないか」は、別文脈の話だと意識はしてます。 ただ、自分があの角度からモノを考えたことがなかったので、面白いなぁと思ってメモしたしだいです。

長文しつれいいたしました。
とても面白かったです。

779   投稿者: しっぽ (2006年08月24日 00:50)

ありがとうございます。

なるほど、ヘッドといってもホットさのヘッドと言えば良いのでしょうか?
とりあえず、「ロングテールの消費者~」の話と同じように、ヘッドの意味が2種類に分かれていることに関しての話です。
GIGAZINEがヘッドなのだから仕方ないという論調がありますが、GIGAZINEの持つヘッド性と、ホットエントリーの表示すべきヘッド性は別のものだろ?というのが僕の意見なわけです。

わざわざコメントありがとうございました。

1826   投稿者: Leo Stephenson (2007年09月02日 09:58)

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http://www.angelfire.com/aoyobu/2.html >am
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