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2008年09月03日

 ワンキーがモバゲーを呪うこのエントリーを含むはてなブックマーク

天丼屋さんのチェーン店「てんや」に置いてある、社長のペーパーラジオに「呪い」について書かれたものがありました。
呪いというのはもちろん、ファンタジー世界の黒いモヤモヤーっとした、あれではないです。
てんやの社長さんは「一つの上手く行った事象に囚われて、別の方法が取れなくなること」を呪いと呼んでいました。

社長さんは、てんやの運営にあたって、天麩羅の「出来立て」を非常に大切にしていたそうです。
作りおきをせず、お客さんの注文を聞いてから作り始め、必ずカリカリの天麩羅を食べてもらう、と。
それが見事に当たり、てんやは関東圏で数多くの店を出すチェーン店に成長しました。
ところが、この作りおきをしないという方針は、ファーストフードと違い料理にそれなりの時間がかかる天丼屋で大きなデメリットを孕んでいました。
ランチタイムに客が殺到すると、時間がかかりすぎて短い昼休みが終わってしまう、と、つまり「てんやは凄く遅い」という悪評が産まれてしまったそうなのです。
実は今のてんやは、お客さんが多く来ると予想される時間帯のみ人気メニューを作りおきしています。
出来立ても大事だけれど、お客さんの時間だって大事だ。少し作りおかれた天麩羅でも、時間の無い時すぐ出てくるほうが嬉しいのじゃないか?と、それぞれの価値観のバランスを取った折衷案です。
作りおきをするべきかしないべきか、どちらが正解かは一概に言えませんが、少なくとも「そういう方法があるのでは?」と気づき、考慮することは大切なことです。
ところが、社長さんはしばらくそれが出来なかったと反省していました。
「出来立て」による成功により、これが鉄則になってしまい、無限大の価値観を持ってしまった。それを破るなんてとんでもないと頑なになってしまった。
これが呪いというわけです。
ためになりますね。

多くの人が無意識にこの呪いに囚われることがあります。
とても分かりやすいのは、ニコニコなどのゲームプレイ動画で見ることができます。
ユーザーは一つの方法が凄く上手く行くと、別の方法があるにも関わらずずっと同じ方法に頼ってしまい、新しい動きをしなくなることがあります。
見てる側からすれば「お前はサルか!」と突っ込みたくなるものですが、プレイに夢中になっていると気づけないものです。
あなたの会社や学校にも、法則や主義のみに囚われて、それに沿わないものは全て却下という頭の固い人はいませんか?
もしかしたらその人は呪われているのかも・・・。

 

さて、本題ですが、モバゲーも今あることに呪われています。
それはFlashゲームが殆ど「タイミングゲーム」になってしまうという呪いです。
(携帯のゲームには、高価なアプリゲームと、安価なFlashゲームがあります。アプリゲームにはこの呪いがかかっていません。理由は後述します。)
タイミングゲームというのは、画面の動きを見て、ちょうど良いタイミングでボタンを押すことが主軸のゲームです。
例えばRPGはタイミングゲームではありませんし、ソリティアやぷよぷよ、シムシティも違います。
マリオなんかはタイミングが重要なゲームではありますが、それが主軸というわけではありません。
タイミングゲームは、普通UFOキャッチャーのような筐体物や、ゲーム中のミニゲームとして登場します(三国志大戦の一騎打ちや訓練など)。

もちろん、同じ仕組みを使いまわすことでコストの削減が可能という話もあるでしょう。
しかし、今モバゲーは製作者がネタ切れに苦しんでいるのが伝わってくるほどに、無理矢理にもタイミングゲームだけを作り続けています。
モバイルサイトはゲームの数量を増やすため、アプリよりコストの低いFlashを量産する傾向がありますので、モバゲーを見回せば、大量のタイミングゲームが・・・。
モバゲーと書きましたが、この呪いは他の大手も感染しています。

何故こんなことになってしまっているのでしょうか?
この話は約5年ほど前、携帯アプリゲームがやっと市場を確保したあたりまで遡ります。
この時期携帯ゲームにはあることが提唱されていました。
「携帯ゲームは片手でできるほどシンプルであるべきだ」
非常に妥当な提言です。
携帯電話はそもそも片手で操作するようにできていますし、携帯ゲームは片手に鞄を持ったり、つり革につかまりながら遊ぶものです。
そもそも携帯電話は、メインの選択キーの周囲に方向キーが4つ、さらにその横にソフトキーと呼ばれるボタンがあり、これだけで移動、選択、キャンセルと、ファミコンレベルの操作は可能なわけです。
だから、数字キーにいちいちそれぞれの操作を割り当てるなんて、昔のPCゲームみたいな操作感の悪いことをするのは、それだけでゲームデザインに問題がある証拠だったわけですね。
さらにシンプルさを突き詰めて、ワンキーゲームというものも流行します。
一つのキーだけを使い、「連打」「押し離しの切り替え」「反射神経」「タイミング」などで遊ぶもので、ライト層に非常に好評でした。
(この4つはファミコン時代に桜井政博さんが、一つのキーで遊ぶ方法を分類したものを引用しています。)

この鉄則はFlashゲームというものが登場しても引き継がれます。
ところがここで、大きな技術的問題が出現しました。
Flashは一度ダウンロードするアプリと違い、ブラウザ上で動作するため、一部のキーを取得することができません。具体的に言うと、左右キーです。
これはブラウザの進む、戻るに対応しているため、押したが最後、ゲームは終了して別のページに移動してしまいます。
上下キーは問題なく取ることができるのですが、上下キーだけをユーザーに操作してるとかなりの確率で間違って左キーにも触れてしまい、ゲームが終了してしまうという理由で、使用されなくなりました。
ソフトキーはもちろん、ブラウザのメニューに割り当てられているので使用できません。
残されたのは決定キーのみ。
ファミコン程度の操作ボタンが、あっという間に1つのボタンになってしまいました。

問題無いじゃないか、だってユーザーはワンキーゲームを望んでいるんだぜ?
そうだった、じゃあFlashで連打ゲームを、押したり離したりで切り替えるゲームを、反射神経ゲームを・・・。
しかし、実はこの3つ、携帯Flashで作るのが非常に難しいのです。
まず、決定キーは携帯Flash上では押して離した時に初めて反応します。(これがユーザーにズレとして感じられることもあります。)
(追記:5キーと#キーにもこの特性があります。)
なので押している間はFlashは反応しません。当然、押し離し切り替えゲームは無理です。
次に携帯Flashはキーが押されるたびにCPUを食い、一瞬遅れます。
連打なんかされた日には、ガクガクしてとてもゲームになりません。
最後に、ただでさえ遅い描画速度が、携帯によって違うので、反射神経ゲームもまともなゲームになりません。
おいおい、Flashダメダメじゃないか・・・。

実は、数字キーを使えば、もっとマシなものが作れるのです。
2468を十字キーに見立てることだって可能でした。
しかし携帯ゲーム業界は、残された1つの決定キーと、唯一可能なタイミングゲームだけという道を選んだのです。
せめてワンキーであっても、2キーや8キーを使うのであれば、間違ってブラウザバック操作をすることも、操作にズレが起こることも(2キー8キーは押した時に反応するので、感覚的なズレがありません)無かったのですが・・・。

理由の一つはもちろん、数字キーなんて使わせるゲームはそれだけでゲームデザインに問題がある証拠だったからです。
(もちろん、モバゲーのライト層取り込みの戦略でもあったでしょうが、これは技術的問題によって出た結果に理由を後付けた感が否めません。)
アプリとFlashじゃ事情が違うのに・・・全てがワンキーになったら、ワンキーじゃないゲームの需要も出てくるのに・・・

最初のうちはワンキーのタイミングゲームでも色々なネタがありました。
しかし、最近では別の種類のゲームを無理矢理ワンキーに変換しているものもあります。(例えばパズルゲームで、操作する場所をタイミングで選ぶ、など)
そんなことになって初めて気づかされるのは、ユーザーはもう完全に、Flashゲーム=決定キーのみで遊ぶゲームと思い込んでいて、今更変えることはできないという状況です。

さて、携帯ゲーム業界はこのワンキーの呪いを解くことができるのでしょうか?
方法としては幾つか考えられます。
例えば「マルチキーFlash!」などと、新ジャンルを銘打って、複数のゲームを「これは数字キーを使うんだよ~」とユーザーに分からせた上で遊ばせ、広げていくとか。
でも、それをするにはまず「Flashは必ずしも決定キー1つで遊ばせる必要は無いのでは?」と考えなければなりません。
これは意外と難しいことなのではないでしょうか。

携帯Flashゲーム市場は、このままタイミングゲームのみを、(次のFlash仕様が出るまで)ネタが枯渇しても作り続けるのか、それともある時から数字キーに舵を取るのか、、、
どちらに進むのか気になるこの頃です。

コメント

5197   投稿者: しっぽ (2008年09月03日 04:22)

あ、もちろんモバゲーは実際のところコミュニティサイトなので、ゲームの面白さはどうでもよいってとこはあるんですが

5201   投稿者: ぬる (2008年09月03日 22:36)

どうも

http://tail.s68.xrea.com/html/etc/source_aaw/

※警告
・このファイルを無断転載してはいけません。
・このファイルに使用されているAS、動作を参考にするのはいいです。
・このファイルを改造して作品を作るのは駄目です。
・常識の範囲内で、参考として使用してください

とありますが、これは「おまけ」についても同様なのでしょうか。

http://tail.s68.xrea.com/html/etc/source_aaw/files/mapper.swf
http://tail.s68.xrea.com/html/etc/source_aaw/files/keycode.swf

5204   投稿者: しっぽ (2008年09月04日 00:32)

たいしたものでないので別にいいですけど、何にも使えそうにないと思いますけどねー

5213   投稿者: Primary (2008年09月05日 09:58)

PC-98時代の光栄のSLGでは、
テンキーとリターンキー(エンターキー)だけで完結していたことを思い出しました。

携帯電話こそテンキーに特化したゲームが流行ると思ったんですがね~

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(サーバーが見つかりませんの表示になることがありますが、
正しく投稿されてることが多いです。
落ち着いて確認してみてください。)

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