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2006年08月18日

 牛乳有害説から見る、詭弁の基本。このエントリーを含むはてなブックマーク

Yahoo!ニュース - 毎日新聞 - <牛乳>「有害」本が波紋 でもやっぱり「有益」は多数派

こんな話があったなんてまったく知りませんでしたよ。
ところで、このニュース記事が本当のことならばかなりゲーム脳みたいな論法が使われ、公然とまかり通っている・・・らしいのでかなり嫌なところ。

牛乳はすきでも嫌いでもないのでどっちでも良いのですけど、この人パンは食べないのかな?とちょっと疑問に思ったりします。
で、この問題自体は真面目に議論するのも少し憚られるのですが、これらの話(つまり真偽よりもこのニュースで取り上げられている内容は)はとても詭弁の基本挙げていて、非常に面白いサンプルになります。
(多分、毎日新聞の記者は、立場上おおっぴらにできないが、この本が詭弁だと主張したいのじゃないかと思う。賛成論の後に必ず否定論を載せているし。)

日本人が1年間に飲む牛乳は1人平均約35リットル。デンマークやオランダなどは優に100リットルを超える。チーズなど乳製品を含めると、その差は4倍前後にもなる。しかし、高齢者の大腿骨頚部(だいたいこつけいぶ)(太ももの付け根)の骨折率は北欧諸国の方が日本より高い。このため「牛乳は防止策にならない」との指摘がある。

これは最もメジャーな統計トリックです。
AとBの差について、何に原因があるかは統計では算出できない場合があります。
具体的に言えば北欧諸国と日本では牛乳以外の差がありまくりで、この骨折率の原因は牛乳以外にある可能性が非常に高いため、牛乳を根拠とするのは立派な詭弁だということです。
統計から牛乳の骨折率の関係を調べたい場合、全員同じ日本人から牛乳をよく飲む人間とそうでない人間を何千人か(多ければ多いほどいいけど)サンプリングしてそこから求めたほうが正確です。
できれば追跡調査をするべきですが。

子牛の成長を促す牛乳には、硫酸エストロンなどの女性ホルモンが含まれている。佐藤章夫・山梨医科大名誉教授はこの視点から、今年6月の環境ホルモン学会で「硫酸エストロンはビスフェノールAなどの環境ホルモン(内分泌かく乱物質)よりも強い」との説を発表し、注目された。

ここで注目すべきは、主語が牛乳は、ではなく、硫酸エストロンは、となっている点です。
イソフラボンは有名な女性ホルモンですが一般に健康成分として知られています。
ですから女性ホルモンが(または環境ホルモンが)有害物質に直接繋がるというわけではありません。
また硫酸エストロンがビスフェノールAよりも強いという事実は、牛乳が環境ホルモンよりも有害ということになるわけではないということは理解していただけるでしょう。

 同名誉教授は、雌ラットに発がん物質と同時に牛乳や水などを与えた実験結果から、牛乳に乳腺腫瘍(しゅよう)を促進させる作用があったとして「牛乳を大量に飲み続けると卵巣がんなどのリスクが高まる」との仮説を提起した。

ラット実験は書籍「買ってはいけないは買ってはいけない」で多く指摘された詭弁の1つとなりえる可能性があります。
ラットによる実験は生物への影響を調べる上で非常に有益ですが、詭弁に使われることも多くあります。ラットへ与える物質の量は人間換算すると非常に大きくなり、影響が誇張される場合があるので注意するべきです。
例えば書籍「買ってはいけない」では、ラットへある物質を投与し続けるととある病気になる、という文章があるのですが、書籍「買ってはいけないは買ってはいけない」では、水でさえラットに大量投与しつづければ下痢を引き起こす、となっています。
牛乳の例で言えば1日2本牛乳を飲むと下痢を起こすといわれるように、非常にタンパク質の刺激が強い飲み物であることが知られています。
このように一定量を超えると悪影響を及ぼす危険性は無視できないのは確かですが、ラットの体重と人間の体重から一日どれくらいの牛乳がこの影響を出すのか算出するべきです。

実際のデータについてはこちらで見つけました。

http://food.kenji.ne.jp/review/review193.htmlより
4 「ヨーグルトを与えたラットのすべてに白内障がみられたこと
を報告」(247頁下段17、18行目)の記載について
 
(事実)
 本実験は、ラットに対するヨーグルト摂取量を、体重60kgの人間
に換算して一日当たり21.6kg~24kgとするなど極端な条件を設定し
たものである。このような日常生活では想定できない摂取量による
実験結果を根拠としてヨーグルトの摂取と白内障との因果関係を結
びつけた記載は不正確で誤解を与えるものである。
体重の3分の1のヨーグルトは普通にストレスで死ねると思います。

また、実験は基本的に人間で行うべきで、ラットは代替手段であるため、牛乳の実験でラットは使うべきでは無いと言えます。
毒物の実験でラットを使うのならわかりますが、そこらじゅうに大量のサンプルが存在する人間社会にいるのにも関わらず、ラットで牛乳実験をすることは正確性に欠けるでしょう。
ラットはラットであり、人間ではありませんから、別の原因が作用する可能性は非常に高いです。

ネット上で取り上げられることが多い有害説の論拠の一つが「牛乳は子牛が飲むもの。人が他のほ乳動物の乳を飲むのは不自然」との考え方だ。

これは既に詭弁にさえなりません。
不自然であるか、不自然でないかという議論は、悪徳商法で使用され、たまに騙されてしまう人がいますが、殆どの人は感覚的にこれが間違った主張であることを見抜きます。

分かりやすい例を挙げれば、「動物は服を着ないのが自然だ。人間は動物である。よって人間は服を着ないのが自然だ。(→だから裸で生活しようと繋がる)」といった三段論法でありますが、頭の「動物は服を着ないのが自然だ」の根拠が無いため詭弁になっています。

追記:
この話の元となっていると思われる文章を発見したのでURLを貼っておきます。
PDF形式につき、表示が重いパソコンでは注意してください。
http://www.maff.go.jp/www/houdo/houdo/sincho45.pdf
これを見ると、「"牛の血液"を飲み続けるのか」など、ニュース記事よりも過激な表現がかなりあります。

コメント

776   投稿者: no_name (2006年08月22日 18:06)

牛乳って先天的に飲める人とあまり飲めない人がいるらしいですね

777   投稿者: しっぽ (2006年08月23日 23:47)

乳糖不耐症ですね。
個人によって牛乳に含まれる乳糖の分解力が違うために起こります。

さらに言うと動物間でもかなりの差があり、だからこそラット実験は信用がおけないわけです。

832   投稿者: 牛乳普及委員 (2006年09月30日 01:01)


鮭は淡水で生まれ海水に戻り淡水に帰る。
それを自然と呼ぶ。
鮭が海水で生まれ淡水に戻り海水に帰ったとしよう。
それを不自然と呼ぶ。

自然には根拠などない。
信心深い人は神に根拠をおき、
そうでない人は進化論なるおとぎ話を創った。

ミトコンドリア・イブ。
人類のルーツがアフリカの一人の女性に集約するという説。
人は寒さには弱いが暑さには強い。
人は犬猫が持つ保温装置を持っていない。
人は犬猫が持たない冷却装置を持っている。
文明を発達させ、人は寒冷地にも住めるようになった。
寒冷という自然に対抗した。
一般的にそれを不自然と呼ぶ。

「乳は嬰児・新生児・乳児・幼児の栄養源」であり、
それ以外の者が飲むことは不自然である。
小学生の子供が母親の乳首にむさぼりついていることは不自然である。
成牛が人間の母乳を飲むことも不自然である。

出産直後の子牛は初乳を飲み、
産後しばらくたった子牛は常乳を飲む。
それは自然だ。
出産直後の子牛が常乳を飲み、
産後しばらくたった子牛が初乳を飲む。
それは不自然だ。
と、どこかに書いてあった。
http://www.unlimit517.co.jp/ana129.htm
そして不自然の結果として子牛には死が待っている。

私は悪徳商法に騙される純粋なる輩のことが心配である。


833   投稿者: しっぽ (2006年09月30日 20:50)

い、いまいちどこまでが引用で、主張なのかわかんないです・・・。

840   投稿者: 牛乳普及委員 (2006年10月01日 15:53)

『出産直後の子牛が常乳を飲むのは不自然だ』といった意味の書き込みが牛乳肯定派によりなされているということが言いたかったのです。

私はどちらかというと否定派です。
裸で愛し合うほうが、着衣で愛し合うより気持ちがいいと感じるほうですから。
着衣プレーも悪くないですが・・・

841   投稿者: しっぽ (2006年10月01日 19:08)

>『出産直後の子牛が常乳を飲むのは不自然だ』といった意味の書き込みが牛乳肯定派によりなされている

これははじめて聞きましたが・・・
えーっと、要は自然とか不自然とかそういう問題ではない、という話では?
少なくとも否定派さんは普段裸で過ごしているわけではないんじゃないでしょうか?

843   投稿者: 牛乳普及委員 (2006年10月02日 08:22)

 酪農学園大学 酪農学部長 岡本 全弘氏

●市販の牛乳を給与すると、子牛が死亡する。
  (新谷氏「病気にならない生き方」より)
───────────────────────────────────
 ○子牛は、胎盤の構造上、母牛から胎盤を通して、免疫物質を受容出来ない
  ので、初乳に、多量の「免疫グロブリン」を含ませて、疾病を予防する。

  市乳(市販の牛乳)は、分娩後、数日間分泌される初乳ではなく、成分の
  安定した常乳なので、「免疫グロブリン」は含まない。

  だから・・・

  市乳(常乳)を給与しても、子牛の罹患率を低下させることが出来ないのは、
  当然である。もちろん、市乳(常乳)は、決して、有毒ではなく、子牛にと
  っても、安全な栄養供給源であるが、通常は、出荷(売り物)する。
───────────────────────────────────

845   投稿者: しっぽ (2006年10月02日 09:39)

すいません、えーっと、「牛乳肯定派」ってのは、牛乳は健康にいい!って言ってる人ですよ、ね?
もしかして逆?
あとその記述に関するコメントを僕のブログでやられても・・・

848   投稿者: 牛乳普及委員 (2006年10月02日 13:53)

岡本全弘なる人物は思いっきり「牛乳肯定派」です。
http://www.rakuno.ac.jp/news/200601/news26.html
当然のように、牛乳否定の 『病気にならない生き方』 を否定しているのです。

849   投稿者: しっぽ (2006年10月02日 14:29)

申し訳ないんですが、牛乳肯定派の人が全員同じ理論を使って、なんか流派を作って対立しているわけではなく
当然僕はその方と同じ理論を使っているわけでも、っていうかどう使ってるかも知らない状態で
その方の批判を僕のブログでやられても困るのですが。

856   投稿者: 牛乳普及委員 (2006年10月02日 18:47)

申し訳ないですが、私はその方を批判しているのではなく肯定しているのです。
私が批判しているのは、
『「牛乳は子牛が飲むもの。人が他のほ乳動物の乳を飲むのは不自然」との考え方』は詭弁であり、
それは悪徳商法のようなものだとした「僕のブログ」です。
>「動物は服を着ないのが自然だ」の根拠が無いため
と書いてありますが、根拠のある自然があったら教えてもらいたいですね。

858   投稿者: しっぽ (2006年10月02日 19:36)

ということは、自然には根拠がないと?
では根拠が無いものは誰がどうやって判断するのでしょうか?

私は否定派の方々の気分や印象のみによって決定されているように思えます。
あなたの「自然」や「常識」がいったい何によって形作られたのか考えたことはあるでしょうか?
生まれたばかりの子供が何も教育を受けずに育った場合、彼は私たちと同じ「自然」という概念を持ちえますか?
遠く離れた別の宗教概念がある国では私たちの「自然」が通用しますか?
それが否とされるのならば、自然とは絶対的ではないものになり、議論において自由にその形を変える非常に都合の良い詭弁の道具でしかありえません。
自然の「公理」はいったいどこにあるのでしょうか?

860   投稿者: しっぽ (2006年10月02日 19:45)

また、自然か不自然かの次において
自然=体に良い 不自然=体に悪いという法則が成り立っていないという指摘もさせていただきます。

人間が技術を持って寒冷という自然に対抗した、例えば服を着たことが不自然だとして、それによって人類は死ぬことはなかったはず。
確かに市販の牛乳を給与すると、子牛が死亡するかもしれません、だからといって人間が死亡する根拠にはなりません。
なぜならその不自然と死亡はたまたまの組み合わせであり、他の組み合わせで健康に害が及ぶとは決められないからです。
例えば人間が牛乳を飲むのを、どうしてこの結果から害があると決めることができるでしょうか?
自然不自然の理論にはこのように飛躍が数多くあるように見受けられます。
根拠の無視、結論の飛躍、主語の不明確化、どれも疑似科学、トンデモと呼ばれる部類の理論です。

862   投稿者: 牛乳普及委員 (2006年10月03日 08:23)

『宗教なくして科学は不具である。科学なくして宗教は盲目である。』
アルベルト・アインシュタイン

彼が言いたかったことは、宗教を持つことは大事だなどということではなく、
根本的疑問を追及しない科学は空しく、
科学的希求のない根本解釈は無意味だ、ということだと私は思っています。

人間はなぜ生まれてこなければならなかったのか?
宇宙はなぜ存在しなければならないのか?

そんなこと永久に分かるはずがありません。

彼はインドの詩人に質問しました。
「月はなぜ存在するのですか?」
タゴールが答えました。
「人間が存在するからです。」

というわけで、自然の根拠など誰にも分かりません。


快楽を追求した哲学者が言いました。

『我々は自然を強制すべきでなく、
 自然に服従すべきである。』
『君が途方にくれて困っているのは、
 それは君が自然を忘却しているからである。
  というのは、
 君は自分でわざわざ不確定な恐怖と欲望を
 作り出しているのだから。』

最後に、
>自然=体に良い 不自然=体に悪いという法則
私はそんな下らない法則はクソだと思っています。
そもそも、「良い・悪い」という二元論自体が空虚ですから。

自然は絶対でしょう。
太陽が消滅したら、現存する地球上の生命体と認識される存在は存在できません。

864   投稿者: しっぽ (2006年10月03日 15:04)

つまり議論する余地も無いということがよくわかりました。

1584   投稿者: 徒手空腹 (2007年04月03日 23:05)

はじめまして。牛乳と骨折に関して調べていてやってまいりました。

日本人だけでの乳製品と骨折頻度の調査は、98年に日本医事新報とメディカルトリビューンに発表されています。

結果はチーズ、ヨーグルト、牛乳すべて摂取の多いほど骨折が多くなるという意外なものでした。(コーヒーも多い人は良くない)
で、お茶をよく飲んでいる人は強かったと。

予想と違う結果のため、大新聞への公表は控え、内輪では「日本食がいいのかな?」ってとことろで落ち着かせようとしたみたいです。

1615   投稿者: ぼぅ (2007年04月17日 15:14)

とりあえず、体にいいの?悪いの?

4738   投稿者: Anonymous (2008年06月17日 06:32)

いい加減な論理だな。
読解力のあるやつなら分かるだろ。

5226   投稿者: 不安 (2008年09月07日 14:11)

牛乳有害説を最近知った者です
自分は幼少の頃より常に牛乳を飲み続けてるけど、骨折どころか骨密度が普通の人より高いと言われたけど・・・飲みすぎると骨折しやすくなるなんてでたらめじゃないの?

5306   投稿者: 脱脂粉乳 (2008年09月20日 11:33)

牛乳と骨密度(強度)の関係ではなく、曖昧で分かりやすい骨折率との関係に絞ったところがこの詭弁の上手いところですね。

オランダ、スウェーデンと日本との比較ですが、骨粗鬆症のリスクが白人の方が高かったりと、他の要因も十分に考えられます。

5340   投稿者:   (2008年09月23日 22:47)

牛乳有害説のうち詭弁であるものだけを取り出して
牛乳有害説全般が詭弁であると主張するのも
詭弁ではないかと。
陸上動物の脂質が動脈硬化の原因となることは無視ですか。
たんぱく質やカルシウムなんて他の食品からいくらでも摂れるのに
血管目詰まりさせてまで牛乳から摂る必要が
どこにあるんでしょうかね。

5341   投稿者: でん (2008年09月23日 23:04)

>陸上動物の脂質が動脈硬化の原因となることは無視ですか。

これ、ソースは何ですか?
統計が詭弁の根拠になっていることは本文中にも述べられていますから、
ちゃんと誰のどんな研究結果なのかを示さないと
誰もあなたの意見に肯定も否定もできないと思いますが。

5342   投稿者: 牛乳大好き (2008年09月24日 00:46)

骨折のリスクは身長や体重の方が影響が大きいと考えるの
は素人考えでしょうか。
あとは職業ですね。肉体労働系の仕事をしてたら必然的に
骨折はしやすくなると思うのですが堂でしょう?
身体を使う人の方が疲労回復を目的に牛乳を飲む傾向
があるとかありえません?印象で統計語っちゃダメですけど。
あと骨折の原因も大きいですよね。


1584さんのいう記事というのはちゃんと身長・体重・職
業・骨折原因を考慮して牛乳を飲んだほうが骨が折
れやすくなると結論付けた記事でした?

ブログ主さんは気づいているかもしれないけど、結局こ
の牛乳有害論ってベジタリアンの人達の妄信とエゴで
話されてる事が多いんですよね。
5340さんの意見って肉を食うなって言ってるのと同じ。
それはある意味では正しいことかもしれないが、正直
そんな世の中はお断りですよ。
そこに小中学校で牛乳飲めなくて嫌な思いをした人の
怨念が混じってる。
結局攻撃的になるばかりで何一つ理性的じゃない。
ブログ主さんが心配せずとも誰も信じたりしませんよ。

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